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循環器科におけるChatGPTの回答能力検証

ChatGPTが、米国の医師免許試験(USMLE)で非凡な回答能力を発揮して以来、研究者らはより専門分野に特化した回答能力を評価する傾向が強まっている。オランダ・アムステルダム大学病院の研究チームは、「循環器科の質問に対するChatGPTの回答能力」を検証した。

medRxivで公開中の同研究では、ChatGPTの回答能力を2種の実験で検証した。まず医療従事者向けの循環器系生涯教育コースの小問50題をChatGPTに回答させたところ、正解率は74%で、分野ごとの正答率は心房細動で70%、心不全で80%、心血管リスク管理で60%と、領域によって精度に差がみられた。次に20の臨床シナリオに対する回答を、専門家の臨床意見と比較した。20例のうち、患者が主治医に質問する小シナリオ10例では、9例で専門家のアドバイスと一致していた。一方、プライマリケア医が専門医に相談するケースを想定したより複雑なシナリオ10例では、5例までは専門医の意見と一致したが、2例は部分一致、1例は結論に至らず、2例は不正解であった。

研究チームでは、「循環器領域においても、簡潔で複雑性の低い医学的質問に対してChatGPTが意思決定支援ツールとなる可能性が示されたものの、より高度な質問には困難が伴う。医療という重大で繊細な状況において使用する際には、説明責任の強化に努めることが重要である」と結論付けている。

参照論文:

Performance of ChatGPT as an AI-assisted decision support tool in medicine: a proof-of-concept study for interpreting symptoms and management of common cardiac conditions (AMSTELHEART-2)

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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