エビデンスに基づく医療(EBM)においては、現場における患者治療だけではなく、各種ガイドラインや政策的意思決定を適切に支援するため、エビデンスレベルに応じた研究評価が行われる。ここではランダム化比較試験や系統的レビュー、メタアナリシスによる強固なエビデンスが優先されることになる。一方で、科学文献の爆発的な増加に加え、ソーシャルメディア、症例報告、大規模観察研究などによる新しいエビデンスソースの出現、さらにこの膨大なエビデンスのフリーテキスト性により、利用可能な最良のエビデンスを評価し選択することが非常に困難となっている。
米コロンビア大学やコーネル大学の研究チームは、ChatGPTに代表される大規模言語モデル(LLM)が、事実誤認や不正確な情報提供といったピットフォールを回避する限り、EBMへの利用機会があることを指摘している。チームがNature Medicineに寄せたレター論文の中では特に、的確性基準の構成における利用可能性に言及する。EBMが他の医学・臨床研究論文と大きく異なるのは、「研究を含めるか否かの正確な基準」が必要なことにある。PICO(患者、介入、比較、結果を指す)フレームワークは、この適格性基準を構成しており、臨床エビデンスクエリを形成するためのプロセスとして広く採用されている。つまり、臨床的エビデンスの検索には、臨床研究課題に関連するPICO基準を満たすRCTを見つけ、これらをシステマティックレビューやメタアナリシスに集約する作業がある。
チームは、LLMがプロンプトを介してタスクを解決できる機能から、アノテーションコストを削減し、PICO抽出を高速化できることを強調する。「従来の言語モデルや、エビデンスレビューアが手動で抽出したPICO評価と比較し、出力の正しさと完全性をチェックする必要がある。また、LLMの使用については異なる生物医学ドメインで検証し、異なるトピックに使用することの適合性を評価する必要がある」として、一方で安易な利用拡大は行うべきではない点も強調している。
参照記事:
AI-generated text may have a role in evidence-based medicine
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