膵臓がん患者の腹腔洗浄細胞診(CY)標本から、1年生存率を予測するAIが高い精度を示すことを明らかにした。東北大学の研究チームによる本成果が、Scientific Reportsで8月2日から公開されている。従来、CYは主に膵臓がんの病期分類に使用されてきたが、患者の予後までを予測できるものではなかった。本研究ではCY陽性患者の予後予測にも活用できる可能性を示している。
本研究論文によると、チームは88人のCY陽性膵臓がん患者のデータを用いて、Vision Transformer(ViT)と畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による深層学習モデルを構築した。ViTモデルは特に高い性能を示しており、ROC曲線下面積(AUC)として0.8056で1年生存率を予測していた。さらに、Kaplan-Meier生存分析を用い、ViTによる予測結果が患者の実際の生存期間と有意に相関することを確認した。
さらに興味深いことに、予後不良と予測された核画像は好中球由来である可能性が、予後良好と予測された核画像はマクロファージ由来である可能性が、それぞれ示唆された。この発見は、腹腔内の免疫環境が膵臓がんの進行や予後に重要な役割を果たし得ることを示唆する。特に腹腔内の好中球が腫瘍の進展を促進し、予後に悪影響を与える可能性から、これらの細胞が新たな治療標的となり得る、と研究者らは述べている。
著者は今後の展望について、「膵臓以外にも、腹水に影響を与え得る臓器の疾患に対しても研究を行い、悪性腫瘍の超早期の予測・予防への貢献を目指し、生存関連因子の機序の解明を進める予定」と述べた。
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