子供の近視発症を高精度に予測し、適切な治療介入を促進する深層学習システム「DeepMyopia」が開発された。中国・上海の研究チームによる本成果は、Natureの専門誌であるNPJ digital medicineで8月7日から公開されている。
近視は世界的な公衆衛生上の課題となっており、早期発見と予防が重要とされている。DeepMyopiaは、網膜眼底画像と非散瞳下の眼科データ(年齢、性別、眼軸長など)を用いて、近視発症リスクを予測しハイリスク群を特定することで、効果的な介入を可能にする深層学習システムだ。上海の大規模コホート研究データ(n=1,638,315)を用いて訓練され、外部データセット(n=22,060)で検証された。その結果、1年、2年、3年後の近視発症予測のROC曲線下面積(AUC)がそれぞれ0.908、0.813、0.810となり、他の比較モデルに対して優れた予測性能を発揮した。
さらに、DeepMyopiaは子どもたちを近視発症の低リスク群、高リスク群へと効果的に分類し、介入のガイドとして機能する可能性がある。研究では、模擬ランダム化比較試験(eRCT)を実施し介入を行ったところ、DeepMyopiaを使用した介入群では、非散瞳下メタデータモデルと比較して、近視発症の相対的リスク減少が-17.8%と、近視発症の減少に寄与し得ることを示した。また、DeepMyopiaを用いた介入は100万人あたり13.54年の失明回避につながると推定された。
著者らは、「このシステムが公衆衛生の分野で大規模なスクリーニングや介入の指針として有用である」と述べている。また、今後の展望として、「さらに広範な地域や異なる人種での適用性を検証し、長期的な効果を評価するとともに、スマートフォンを用いた網膜画像技術を用いることで、より多くの子どもたちが恩恵を受けることが期待される」と述べた。
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