医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例胎児心拍数陣痛図から胎児アシドーシスを予測するAI

胎児心拍数陣痛図から胎児アシドーシスを予測するAI

胎児心拍数陣痛図(EFM)は、胎児の状態をリアルタイムに評価する検査であり、分娩介入への有効性が示されてきた一方、その波形から分娩時低酸素状態の予防に繋げることは困難であった。このほど、米ペンシルベニア大学・ハーバード大学の共同研究チームは、胎児心拍数陣痛図データから、高い精度で胎児アシドーシスを予測するディープラーニングモデルを発表した。

AJOG(米国産婦人科学会誌)に掲載された同研究では、欠損データが30%未満かつ分娩前60分間のデータが存在し、臍帯動脈血pHとの対応が取れる10,182件のEFMデータを用いた。複数のモデルに教師あり学習を行い、「pH値が7.05/7.10/7.15/7.20未満であるか」を予測させた結果、時系列データ分類に特化したInceptionTimeモデルが最も高い精度を示した。特に、pH値<7.05の予測ではAUROCが0.85、pH値<7.10の予測ではAUROCが0.83であった。また、「Base Excessが-10meq/L未満」を予測項目に追加すると、いずれのpH値への予測でもAUROCが0.85を超える結果となった。外部検証ではAUROCが0.72という結果を得ている。

研究チームは「従来の視覚的な解釈や既存のソフトでは、EFMデータを十分に活かせていなかったが、深層学習によりEFMの解釈性を高めることが可能となった。今後は、本モデルがより有効となる患者特性を探りたい」と述べている。また、EFM分析では、局所の非線形的な特徴も考慮できるモデルが有用であることが示された。本技術が現場で活用されることで、分娩ケアのより一層の向上が望まれる。

参照論文:
Intrapartum electronic fetal heart rate monitoring to predict acidemia at birth with the use of deep learning

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R.A.
R.A.
東京大学医学部医学科。医学を学ぶ傍ら、機械学習や深層学習に関心を持ち、シンクタンク・AI企業でのインターンにて、データ分析や社会実装の現場を経験。テクノロジーを活かした知の発掘,医療の質向上の実現を目指している。
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