患者状態を把握するための超音波検査(Point-of-care ultrasonography:POCUS)は日々診療現場で行われているが、得られたデータの活用が進んでいない現状がある。このほど米イェール大学の研究チームは、POCUS動画を元に心筋症のスクリーニングを行う高性能なAIモデルに関する研究成果を発表した。
Lancet Digital Healthに掲載された同研究では、290,245本のPOCUS動画を用いて、畳み込みニューラルネットワークの学習を行った。各動画について「肥大型心筋症」「トランスサイレチン型アミロイドーシスによる心筋症(ATTR-CMによる心筋症)」の判別を行うタスクを行わせた結果、肥大型心筋症についてAUROCが0.903、ATTR-CMによる心筋症についてAUROCが0.907という高い精度を示した。また、肥大型心筋症患者の58%、ATTR-CMによる心筋症患者の46%が、確定診断の約2年前時点での動画で、同モデルによりスクリーニング陽性と判定されることが分かった。また、心筋症の診断が無い患者の追跡調査を行ったところ、同モデルで心筋症の確率が高いと示された患者群で有意に死亡リスクが高いことが示された。
研究チームは「AIモデルを用いて臨床診断の数年前から疾患を検出することで、治療可能な心筋症に早期介入することが可能になるだろう。これからは患者の層別化にも活用したい」と述べている。今後は前向き研究での検証を通じて、臨床現場での有効性が高まることが期待される。
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