医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例浸潤性乳管がんの遠隔転移リスクを予測するAI

浸潤性乳管がんの遠隔転移リスクを予測するAI

浸潤性乳管がん(IDC)は、血行性・リンパ行性に他臓器転移を来しやすいことで知られるが、適切な予後予測と乳がん全体の死亡率低下のためには、転移リスク評価が重要である。中国の研究チームはこのほど、機械学習によるIDCの遠隔転移リスク予測に関するAIモデルを開発し、PLOS Oneに発表した。

研究者らは、米国SEERデータベースを用いて88,236名のIDC患者の臨床・病理学的データを収集し、特徴量選択とデータ前処理を行った。そして、ランダムフォレスト、XGBoost、ロジスティック回帰、サポートベクターマシンの4つのアルゴリズムに基づき遠隔転移リスク予測モデルを構築し、さらに投票メカニズムによるハイブリットモデルを開発した。モデルは、正解率、適合率、再現率、F1スコア、AUCで比較され、その結果、投票メカニズムに基づくハイブリッドモデルが最も高い値を示した(正解率:0.867、適合率:0.929、再現率:0.805、F1スコア:0.856、AUC:0.94)。また、優れた予測因子として、手術の有無、TNステージ、腫瘍サイズ、化学療法の過去歴が特定された。

現在のところ、AIによるIDCの遠隔転移リスク予測に焦点をあてた研究はほとんど行われていない。研究チームは「医師らは、本モデルに必要な臨床的・病理学的検査情報を簡単に入力することで、転移リスクを迅速に得ることができる」と述べている。

参照論文:
Machine learning-based prediction of distant metastasis risk in invasive ductal carcinoma of the breast

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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