医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例転移性脳腫瘍の原発巣同定を行う機械学習モデル

転移性脳腫瘍の原発巣同定を行う機械学習モデル

転移性脳腫瘍は、頭蓋内病変の約10〜15%を占めるとされる。一般的に、原発巣の同定にはMRIが使用されるが、原発巣が不明な場合には侵襲的な生検が必要となることもある。中国の研究チームは、造影T1強調画像を用いて、転移性脳腫瘍において頻度の高い肺がんと乳がんを区別するラジオミクスモデルを開発し、その成果をTranslational Cancer Researchに発表した。

2015年から2023年までに、病理検査および画像検査によって診断された肺がんを原発巣とする転移性脳腫瘍患者118名と、乳がんを原発巣とする転移性脳腫瘍患者62名の造影T1強調画像をレトロスペクティブに解析した。データはトレーニングセット(126件)と検証セット(54件)にランダムに割り当てている。13種類の重要な画像的特徴量を同定し、これに基づいてロジスティック回帰、サポートベクターマシン、k近傍法、多層パーセプトロン、勾配ブースティング(LightGBM)などの多様な機械学習モデルを構築した。その結果、LightGBMにおいてトレーニングセットで0.875、検証セットで0.866という最も高いAUCを達成している。

本研究では、MRIラジオミクスモデル、特にLightGBMが転移性腫瘍における原発巣の区別に重要な役割を果たす可能性が示されている。研究チームは「今後さらなるデータの集積によりパフォーマンスを改善することで、本モデルが原発巣不明の転移性脳腫瘍の同定、診断、予後評価において重要な役割を果たすことが期待される」と述べた。

参照論文:
Radiomics models using machine learning algorithms to differentiate the primary focus of brain metastasis

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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