米ジョンズ・ホプキンス大学を中心とする多施設研究チームは、血液中のセルフリーDNA(cfDNA)の断片化パターンを用いて脳腫瘍の非侵襲的診断を可能にする新しい機械学習アルゴリズム「ARTEMIS-DELFI」を開発した。この手法は、従来の遺伝子変異ベースのリキッドバイオプシーが困難だった脳腫瘍に対して、感度の高い検出を実現するもので、学術誌「Cancer Discovery」にて発表されている。
本研究では、脳腫瘍患者148名と健常者357名から血液を採取し、血漿中のcfDNAを解析対象とした。2つの解析技術「DELFI(DNA断片の分布を解析)」と「ARTEMIS(リピート配列のパターンを解析)」を組み合わせた機械学習アルゴリズム「ARTEMIS-DELFI」に、cfDNAの断片の長さ、分布、遺伝子のコピー数の変化、エピジェネティックな修飾情報など、さまざまな特徴を機械学習モデルに学習させ、がんの有無を判別させた。その結果、全グレードの脳腫瘍に対してAUC0.90という高い予測精度を達成し、ポーランドの独立コホートでもその有効性を確認した。これは、ARTEMIS-DELFIが既存の遺伝子変異検出法よりも10倍以上の検出力であることを示しており、さらに直径2cm以下の小型腫瘍でも有効であることが確認された。加えて、血漿中cfDNAの解析から、腫瘍由来DNAと免疫細胞(特にT細胞)のアポトーシスが反映されていることも明らかにされた。
研究者らは「ARTEMIS-DELFIは高い感度と特異度を両立する非侵襲的手法として、救急外来やプライマリケアでの初期スクリーニングに有用」としており、次のステップとして脳腫瘍のリスクが高いより大規模な患者集団を対象に前向き試験を設計すると述べている。
参照論文:
Detection of brain cancer using genome-wide cell-free DNA fragmentomes
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