左室駆出率(LVEF)は心機能を反映する重要な指標である。これまでの予測モデルは、主に心エコー動画を入力に用いるものだったが、計算資源が限られる場では、モデルの利用が難しかった。この課題に対し、米Mayo Clinicらの研究チームは、心エコーの単一静止画(フレーム)からLVEFを推定する高精度なAIモデルを発表した。同研究はLancet Digital Healthに掲載されている。
本研究では、19,627人の患者の心エコー動画から得た473,803枚のフレームを用いて、2次元畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の一つであるResNet の学習を行った。動画データは,経胸壁エコーデータとポータブルエコーデータの2種があり、学習用フレームは、各患者の動画複数本から最大8枚のフレーム(オリジナルおよびデータ拡張したもの)をランダムに抽出したものを用いた。本モデルでLVEF推定タスクを行った結果、患者の各心エコー動画から1フレームのみを選択し、それぞれ算出したLVEF推定値をまとめて平均化することで、経胸壁エコーデータではAUCが0.90超、ポータブルエコーデータではAUCが0.85超という高い精度を示した。また、収縮末期時点のフレームを用いた際、より正確な推定値となることも明らかとなった。
研究者らは「データ削減をしてもなお、十分な精度が出ると示すことが出来た。また、計算負荷の高いビデオ処理のハードルが大幅に低減されることで、ポータブルエコーの有用性はさらに増していくだろう。迅速かつ正確な診断が求められるpoint-of-careの場で、本研究のようなモデルが普及すれば、患者ケアはより向上するはずだ」と述べている。今後はpoint-of-careの場でのコホートを用いた外部検証を行っていくことが求められる。
関連記事:
1.AI心電図により先天性心疾患における左室収縮不全を予測
2.日常診療の超音波検査から心筋症の早期発見を行うAI
3.AIによる心エコー初期評価