膵がん治療の効果判定には、従来の画像診断ではタイムリーかつ正確な評価が難しく、特に免疫療法では結果解釈が複雑になりがちである。米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターの研究チームは、血液中を循環する腫瘍由来DNA断片の解析にAIを応用した新技術「ARTEMIS-DELFI」を開発した。膵がん治療開始後わずか数週間で治療効果をリアルタイムに見極められる可能性を示し、従来の臨床・分子マーカーや画像モニタリングよりも優れた予後予測能力を持つことが明らかになった。
本研究では、膵臓がんに対する免疫療法の第2相試験に参加している患者を対象に、ARTEMIS-DELFIと従来法「WGMAF」を検証した。結果はどちらも治療効果のある患者を特定できたが、WGMAFは腫瘍組織のDNAと血液サンプル中の遊離DNAから治療反応を予測するものであり、全ての患者に腫瘍組織サンプルあるわけではないため解析が困難なケースもあった。一方で、ARTEMIS-DELFIは患者の血液だけでAIが百万単位遊離DNA断片の断片化プロファイルとリピート配列を網羅的にスキャンするため、簡便かつ幅広い患者に適用可能で、治療開始4週間後には治療有効例と治療無効例を高精度に識別できることが検証された。
著者であるVictor E. Velculescu氏は「新しい膵がん治療薬が増えている今、時間が最も重要であり、治療効果がない場合は速やかに別の選択肢へ切り替えたい」と述べ、ARTEMIS-DELFIは「ファストフェイル(早い失敗)」アプローチで治療抵抗性患者の早期発見に貢献し得る。共著者のCarolyn Hruban氏は「腫瘍サンプル不要でコストも抑えられ、臨床導入が容易」と強調し、前向き研究による臨床効果の検証と他腫瘍への応用が期待される。
参照論文:
Genome-wide analyses of cell-free DNA for therapeutic monitoring of patients with pancreatic cancer
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