医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例大規模言語モデルを活用して心臓血管の健康研究におけるデジタル格差を埋める

大規模言語モデルを活用して心臓血管の健康研究におけるデジタル格差を埋める

米国の研究チームは、デジタル化が進む心血管医療の現場で、言語の壁によりスペイン語を母語とするコミュニティがデジタル・ヘルス研究から排除されがちだという問題に着目し、大規模言語モデル(LLM)をと人間の専門家を組み合わせた翻訳ワークフローの有用性を検討し、その提案手法をnpj Cardiovascular Healthにて報告した。

背景には、米国内のヒスパニック/ラテン系住民の1,590万人以上は英語能力が限られるがために、医療情報などが英語のみで提供されることで不利益を被ってきたという事情がある。一方で、ヒスパニック/ラテン系成人のスマホ所有率は91%を超え、デジタルヘルスへの潜在的な親和性は高い。にもかかわらず、既存のデジタルヘルス試験の約半数(51%)が参加条件に英語能力を求めている実態があった。本提案では、まず英語で記述された同意書説明文などの資料を、最新のLLMで自動的にスペイン語へ翻訳。次に、翻訳後の文書をプロの医療翻訳者がレビューするという二段階のハイブリッドワークフローを設計した。一方で、LLMのみでは地域によるスペイン語の方言差や文化的ニュアンスに対応しきれない懸念もあり、二段階目の専門翻訳者レビューでそれを補うとしている。

著者らはこのワークフローについて、「デジタルヘルスの恩恵を均等に享受できるよう、言語的・文化的バリアを低減する現実的かつ費用対効果の高い方法」と述べており、従来から除外されがちだった少数言語話者の参加拡大につながると期待している。今後、実際の臨床試験や医療システムへの導入が進むことが期待される。

参照文献:

Leveraging large language models to bridge the digital divide in cardiovascular health research

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本吉絢
本吉絢
東京女子医科大学卒(MD)、同大学医学研究科博士課程修了(PhD)、米University of Washington研究員を経て、現在は神戸アイセンターにてリサーチアソシエイトとして眼科AI研究に取り組む。趣味は自然と猫や馬など動物たちを愛でて静かに過ごすこと。
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