医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例​​EGPA診断支援MLモデルの開発

​​EGPA診断支援MLモデルの開発

好酸球性肉芽腫症性多発血管炎(Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis; EGPA)は、喘息、好酸球増多、全身性血管炎を特徴とする稀少疾患である。臨床像は多彩かつ非特異的であり、診断の遅れが致死的な心臓合併症を招くリスクがある。チュニジアの研究チームは、この難病の早期発見を支援するため、専門医の診断プロセスを学習した機械学習モデル「EGPA-ML」を開発し、その成果をIntelligence-Based Medicineに発表した。

本研究では、1997〜2023年にかけて単一施設で収集された約1,900項目の臨床データから56の重要項目を抽出。専門医による診断を正解データとして学習させた結果、サポートベクターマシン(SVM)を用いたモデルが最も優れた性能を示した。特筆すべきは、独立した検証データセットにおいて再現率(Recall)0.992という極めて高い数値を叩き出した点である。これは、致死的なリスクを伴うEGPAの「見逃し(偽陰性)」をほぼ完全に防げる可能性を示唆している。また、AIが診断の根拠とした重要因子(特徴量)の解析では、上位を「喘息(36.5%)」と「好酸球数(36.5%)」が占め、次いでANCA、紫斑などが続いた。この順位は専門医の臨床推論と合致しており、本モデルがブラックボックスではなく、医学的に妥当な判断ロジックに基づいていることを裏付けている。

本研究の意義は、稀少疾患であるEGPAに特化した高性能なMLモデルを、長期臨床データに基づいて構築・検証した点にあり、専門医が不在の診療科における強力な支援ツールとなることが期待される。研究者らは「今後はこのアプローチを他のANCA関連血管炎や診断が複雑な稀少疾患に拡張し、ゲノムデータや説明可能なAI(Explainable AI)を活用することで、モデルの精度および透明性をさらに向上させたい」と述べている。

参照論文:

A machine learning–based method for supporting the diagnosis of eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: Development and evaluation

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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