網膜色素変性は進行性の視機能低下を引き起こす遺伝性網膜疾患であり、原因遺伝子の多様性から変異非依存型の治療戦略が求められている。神経前駆細胞の移植は網膜変性を遅らせる可能性が示されているが、移植細胞がどのように網膜機能を維持するのか、その分子機序は十分に理解されていなかった。米国の研究チームは、ラットの網膜変性モデルにヒト神経前駆細胞を移植し、教師なし機械学習を含む解析手法を単一細胞RNA解析などに適応し、移植細胞と宿主網膜細胞の相互作用を解析した。その結果はNature Communicationsに公開されている。
本研究では、網膜変性モデルラットにヒト神経前駆細胞を網膜下へ移植し、単一細胞RNAシーケンスを実施した。得られた転写データに対して、教師なし機械学習による次元削減とクラスタリング解析などを行い、移植細胞と宿主網膜細胞の状態および細胞間相互作用を解析した。解析の結果、移植された神経前駆細胞は主にグリア様の表現型へ分化し、時間とともに成熟することが確認された。また、神経栄養因子の発現が上昇し、光受容体細胞の生存を支え、視細胞保護に寄与する可能性が示された。
本研究で、神経前駆細胞移植は視細胞に分化して置き換わるわけではなく、網膜細胞を保護する役割を持つグリア様の細胞に近い状態になる可能性が示唆された。著者らは、今回同定された保護因子を強化した神経前駆細胞の開発などにより、将来的に網膜変性疾患に対するより効果的な細胞治療の実現が期待されるとしている。
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