急性心不全は、急速な心機能低下によって血液を全身に送り出すことが困難となり、生命を脅かす疾患である。その診断に推奨されている血液検査項目「NT-proBNP」は、年齢や体重、併存疾患などで値の解釈がばらつくことから、利用には改善の余地があった。英エディンバラ大学を中心とした研究グループは「CoDE-HF」と呼ばれるAIツールを開発し、患者情報とNT-proBNPを組み合わせ、「より高精度な急性心不全の推定」を狙った研究を行っている。
BMJに掲載された研究論文では、CoDE-HFを用いることで、従来のNT-proBNPによる診断性能をさらに向上できることを示している。CoDE-HFのモデルトレーニングには、NT-proBNPの他、年齢・腎機能・ヘモグロビン濃度・肥満度・心拍・血圧・浮腫・慢性閉塞性肺疾患・虚血性心疾患、といった臨床変数が取り入れられている。急性心不全が疑われた患者10,369名を対象とした検証によると、従来のガイドラインで推奨されているNT-proBNPのカットオフ値、100、300、1000 pg/mLといった値は、特に高齢者・心不全既往患者・肥満患者で診断性能のばらつきが確認された。一方、CoDE-HFで補正された診断性能は、いずれの患者グループでも一貫してより優れた結果を示すことができたという。
研究グループは「NT-proBNPが依存疾患を含む多くの因子から影響を受けるにも関わらず、臨床ガイドラインで一律のカットオフ値を推奨することの限界」を本研究から提起している。著者のひとりでエディンバラ大学の研究員Dimitrios Doudesis氏は「より多くの既往症を抱えて長生きする高齢患者集団を考えると、CoDE-HFのような診断支援ツールに基づき、個人に最適化されたケアを提供することが今後重要になる」と語った。
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