米ボストン大学などの研究チームは、患者のバイオマーカー分析に基づき、症状が発現する数年前からパーキンソン病の発症を予測するAIツールを開発した。研究成果はこのほど、ACS Central Scienceから発表された。
チームの研究論文によると、「Classification and Ranking Analysis using Neural network generates Knowledge from Mass Spectrometry(CRANK-MS)」と呼ばれるこのツールは、ニューラルネットワークを活用してメタボロームデータを解析するもの。メタボロームは生体内に含まれる代謝物質の総体を指し、これを対象としたメタボローム解析は近年、ゲノムやトランスクリプトーム、プロテオームなどとともに、生命現象を詳細に理解する手法として幅広く利用されている。
メタボロームは、特定の疾患や症状に対してバイオマーカーとして利用することができるが、パーキンソン病を診断するための特異的な血液検査や検査項目は現在存在していない。チームは質量分析によるメタボローム解析により、後にパーキンソン病を発症する患者の代謝物プロファイルの違いについて、臨床診断の最大15年前まで明らかにしており、現在の臨床スタンダードよりも非常に早い段階でパーキンソン病を診断できる可能性が示唆されている。チームは、これらの知見をもとに、メタボロームデータ全体を分析する、非定型的なアプローチにより高精度な予測モデルを導出した。
チームは今後、より大規模な患者コホートでのモデル検証を経て、CRANK-MSを他の疾患にも適用し、新たなバイオマーカーの発見に役立てることができると指摘している。
参照論文:
Interpretable Machine Learning on Metabolomics Data Reveals Biomarkers for Parkinson’s Disease
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