AI技術の進化は医療現場における効果的・効率的なケア実現の道を拓いている。近年、患者の交通手段や住居、食料供給、支援者や家族および友人の有無など、「健康に影響を及ぼす社会的決定要因(SDoH:social determinants of health)」に注目が集まっている。米ミシガン大学の研究チームは、これら「医療外の支援ニーズ」を持つ患者を特定可能な新しいAIツールの開発に取り組む。
Health Services Researchに発表された同研究では、医療外で特に複雑なニーズを持つ認知症患者に焦点を当てている。認知症患者は、日々の生活で多くの支援を必要とし、そのニーズは多岐にわたる。本研究では、ミシガン大学病院で診断済みの231名の認知症患者に対し、ソーシャルワーカーが作成した7,401件の記録から1,000件を抽出した。研究チームはこれらのデータから7つのSDoH(住居、交通、食事や服薬、社会的孤立、虐待、ネグレクトや搾取、経済的困難)を特定するルールベースの自然言語処理(NLP)ツールを開発し、その要因を正確に抽出することに成功した。さらにこのNLPツールはSDoHの特定において、ディープラーニングモデルやロジスティック回帰モデルよりも優れたパフォーマンスを示した。
著者のElham Mahmoudi氏は「このアルゴリズムが、認知症患者など社会的に脆弱な患者集団の医療外ニーズに対処するためのツールとなり、臨床医、ケースマネジャー、ソーシャルワーカーらにとって有用な可能性がある」と語った。研究チームは今後、ミシガン大学病院の全プライマリケア患者に提供されるSDoH質問票に対して、このツールを前向きに検証することを予定している。
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