気候変動の進行に伴う健康リスクの増加が問題視されており、その対応が求められている。特に急性虚血性脳卒中(AIS)は気象情報が発症に関与することが知られている。ドイツ・マンハイム大学病院を中心とした研究チームはこのほど、気象データを活用してAISの発症数を予測する機械学習モデルを構築した。研究成果は学術誌「NPJ Digital Medicine」にて発表されている。
本研究では、2015年から2021年にかけての約8,000件のAIS入院データと気象観測データを組み合わせ、日次単位での発症予測を試みた。気温・気圧・風速など133項目の気象データを特徴量として、XGBoostやランダムフォレストなどのモデルを構築。その結果、XGBoostが最も高い予測精度を示し、ほぼ誤差なく予測できたという(平均絶対誤差:1.21件/日)。特に、高気圧下や寒冷ストレスが持続する日、強風が吹く日などにAIS発症数が増加する傾向が認められた。また、SHAP解析により、予測に寄与する気象因子の可視化と解釈も可能となっている。
急性脳梗塞は治療の時間依存性が極めて高い疾患であり、事前に入院需要を予測することは、病院の人員配置や患者搬送の最適化につながる。研究チームは「本手法は軽量な計算資源でも動作するため、将来的には気象予測モデルと連携したリアルタイムの発症リスク通知や、ハイリスク患者への予防的介入への活用を視野に入れている」と述べている。
参照論文:
Machine learning-based forecasting of daily acute ischemic stroke admissions using weather data
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