医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例ChatGPTによって生成された前立腺癌病理レポートが患者の理解を深める

ChatGPTによって生成された前立腺癌病理レポートが患者の理解を深める

専門用語で書かれた医療レポートは患者にとって理解が難しい場合が多い。カリフォルニア大学アーバイン校の品質改善チームは、生成AIを用いて、患者に分かりやすい病理レポートを作成する取り組みを行った。この取り組みは、患者の理解度を高め、医療者とのコミュニケーションを改善することで、より良い医療提供につなげることを目的としている。研究成果はScientific Reportsに報告された。

研究では、前立腺摘除術および前立腺生検の病理レポート各25件を対象に、ChatGPT-3.5を用いて患者に理解しやすい言葉でのレポートを生成した。生成されたレポートは、9人の泌尿器科医が内容の正確性などを評価し、41人の患者が読みやすさや理解度を評価した。医師の評価では、AIが生成したレポートの病変範囲などに関する記載は約80%が正確であると判断され、AI生成レポートを診療に取り入れたいと回答した。また、患者の評価では、AI生成レポートは構造化されており読みやすい(90%)、診断理解に役立つ(88%)と回答され、約4分の3の患者が補足資料としての提供を希望した。

研究チームは、適切なプロンプトのもとでChatGPTが複雑な医療情報を正確に処理できる可能性を示したと述べている。その一方で、生成AIが医療現場で誤情報を生むリスクも依然として大きな課題であり、不正確な記載や不十分な疾患説明が含まれる場合には、医療者による確認と説明が必要であると指摘している。著者らは、本研究がAIツールの安全かつ効果的な活用を継続的に発展・最適化するための指針となり、今後の医療コミュニケーションの質的向上に寄与する重要な一歩であると結論づけている。

参照論文:

Evaluation of prostate cancer pathology reports generated by ChatGPT to enhance patient comprehension

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本吉絢
本吉絢
東京女子医科大学卒(MD)、同大学医学研究科博士課程修了(PhD)、米University of Washington研究員を経て、現在は神戸アイセンターにてリサーチアソシエイトとして眼科AI研究に取り組む。趣味は自然と猫や馬など動物たちを愛でて静かに過ごすこと。
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