医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例人工知能による網膜年齢差が女性の生殖老化の指標となる

人工知能による網膜年齢差が女性の生殖老化の指標となる

脳画像を用いてAIが推定した年齢と実年齢との差「脳年齢ギャップ(BAG)」は、認知機能低下の早期発見に役立つ新たなバイオマーカーとして注目されている。今回紹介する研究は、その発想を眼に応用し、眼底画像から推定される「網膜年齢差(AIが予測した網膜年齢と実年齢との差)」を、生殖老化の新しい指標として評価したものである。生殖老化は妊孕性の低下に影響するため、その予測は極めて重要である。従来、卵巣予備能の評価には抗ミュラー管ホルモン(AMH)の測定が用いられているが、採血が必要で侵襲的である。中国の研究チームは非侵襲的な眼底画像による代替指標の可能性を探り、npj Digital Medicineで発表した。

研究チームは、1,294人の健康な女性のデータを用い、Swin-Transformerベースのデュアルチャネル転移学習モデルを開発し、網膜年齢差とAMH値との関連を解析した。特に生殖機能の転換期である40~50歳の女性において、網膜年齢差が大きいほどAMH値が低い傾向が示された。具体的には、40~44歳では網膜年齢差が1年増えるごとにAMH値が低いオッズが12%増加(P=0.018)、45~50歳では20%増加(P=0.038)していた。

眼底画像は全身の老化を反映する微小血管変化を捉え、AMHも冠動脈石灰化など血管老化の指標とも関係している。研究者らは、「網膜と卵巣の老化の背景には血管の老化がある」という共通メカニズムに着目し、網膜年齢差が生殖老化の新たな非侵襲的バイオマーカーとなる可能性を示した。

参照論文:

Artificial intelligence-derived retinal age gap as a marker for reproductive aging in women

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本吉絢
本吉絢
東京女子医科大学卒(MD)、同大学医学研究科博士課程修了(PhD)、米University of Washington研究員を経て、現在は神戸アイセンターにてリサーチアソシエイトとして眼科AI研究に取り組む。趣味は自然と猫や馬など動物たちを愛でて静かに過ごすこと。
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