心臓手術関連急性腎障害(CSA-AKI)は、致命的な合併症である一方で、効果的な予防が行われていない現状がある。その背景には、急激な機能低下を反映するバイオマーカーや適切な予測モデルがなく、事前の察知が難しいことが挙げられる。これに対し、中国の研究チームは、因果推論が可能な深層学習アーキテクチャ「REACT」を用いることで、CSA-AKIを早期に高精度に予測できるとの研究結果を発表した。
The Lancet Digital Healthに掲載された本論文では、中国およびアメリカの63,349件の心臓手術周術期データを用い、REACTの構築および検証を行った。REACTの構築においては、周術期のデータからCSA-AKIのリスクスコア算出を行う段階と、反実仮想的推論において各変数の時系列データがどの程度CSA-AKIの発生予測に寄与するか(Granger因果効果)を算出する段階を繰り返した。これにより、1,328の変数のうち、6つの因子(年齢/血清Cre値/BUN/尿酸/LDH/CK)が、CSA-AKIの発生に主に寄与すると特定することが出来た。検証においては、重症CSA-AKIの発生をより早期に(発症6~48時間前に)検出するタスクで、平均AUROC:0.92と高い予測精度を示した。また、ガイドラインで推奨される診断法に比べ、平均16.35時間早く診断に至ることが可能であった。
研究チームは、「因果推論の手法を組み合わせることで、最小限のデータ要件で高い汎化能力を持つモデルを構築することが可能となる。より多くのデータや予測モデルを用いてランダム化比較試験を行いたい」と述べている。
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