甲状腺がんは最も一般的な内分泌系のがんであり、その診断には主に穿刺吸引細胞診が用いられてきた。しかし、穿刺吸引細胞診では良性と悪性の区別がつきにくい場合が多く、診断が確定しないために不要な手術が行われるケースも少なくない。また、手術中に腫瘍の広がりをリアルタイムで正確に把握する手段も限られており、より精密な術中診断技術の開発が求められていた。
学術誌Biophotonics Discoveryに発表された研究では、造影剤を使用せずに組織の自家蛍光を解析する動的光学的コントラストイメージング(DOCI)技術と機械学習を組み合わせることで、甲状腺がんのサブタイプ分類や腫瘍領域の特定を高精度に行えることを示している。本研究では、摘出された72例の甲状腺組織に対し、23チャンネルのDOCIシステムを用いて撮影を行った。得られた画像データを主成分分析(PCA)とロジスティック回帰、およびセグメンテーションモデル(SE-UNet)で解析し、組織を「正常」「濾胞がん」「乳頭がん」に分類した。結果として、組織分類の正解率はテストデータにおいて100%を達成し、腫瘍領域の特定においても、特に乳頭がんに対して極めて高い精度(Dice係数 0.829)を示した。さらに、使用する波長データを12チャンネルに削減しても精度が維持されることが確認され、システムの低コスト化や高速化の可能性も示唆された。
研究チームは、この技術が手術中のリアルタイム診断支援ツールとして有望であると強調している。DOCIによる非侵襲的かつ迅速な組織評価が可能になれば、穿刺吸引細胞診の診断精度を補完し、手術中の腫瘍切除範囲の決定を支援することで、不要な切除を減らし、より安全で確実な甲状腺がん治療に貢献することが期待される。
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