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心電図波形から低血糖イベントを検出するAI – 針を使わない血糖コントロールへ

糖尿病患者の血糖コントロールのためには、定期的なフィンガープリック(手指に針を指す)による血糖値測定が欠かせない。1日複数回ともなると痛みや不快感は大きく、生活の質(QOL)低下の一因となる。一方で、非侵襲的に血糖値を推定する手法は種々検討されているものの、フィンガープリックを完全に代替する簡便な手法は未だ得られていない。

英ウォーリック大学の研究チームは今月、非侵襲的なウェアラブルセンサーで取得した心電図波形から、ディープラーニングによって低血糖イベントを適切に検出できることを公表した。研究成果は学術ジャーナルScientific Reportsに収載されている。本研究は少数の健常ボランティアを対象としたパイロットスタディではあるものの、アルゴリズムの精度はCGM(NHSで標準的に利用される、小さな針を備えたデバイスを用いた持続モニタリング手法)に匹敵するという。

糖尿病患者における低血糖イベントは、時に意識障害などをきたし得る深刻な病態の1つと言える。Science Dailyの報道によると、研究を率いたLeandro Pecchia博士は「私たちのイノベーションにより、睡眠中を含むあらゆる状況において、心電図波形から低血糖を自動検出できる可能性を示した」としている。

AIの適用により、心電図波形は「元来想定されていた以上の情報を含んでいること」が次第に明らかとされている。循環器領域を中心に、心電図波形が持つ疾患発症への予測力など、研究計画の余地は多分にあるため、今後医療AI研究の1つのトピックとなる可能性が高い。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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