糖尿病患者の血糖コントロールのためには、定期的なフィンガープリック(手指に針を指す)による血糖値測定が欠かせない。1日複数回ともなると痛みや不快感は大きく、生活の質(QOL)低下の一因となる。一方で、非侵襲的に血糖値を推定する手法は種々検討されているものの、フィンガープリックを完全に代替する簡便な手法は未だ得られていない。
英ウォーリック大学の研究チームは今月、非侵襲的なウェアラブルセンサーで取得した心電図波形から、ディープラーニングによって低血糖イベントを適切に検出できることを公表した。研究成果は学術ジャーナルScientific Reportsに収載されている。本研究は少数の健常ボランティアを対象としたパイロットスタディではあるものの、アルゴリズムの精度はCGM(NHSで標準的に利用される、小さな針を備えたデバイスを用いた持続モニタリング手法)に匹敵するという。
糖尿病患者における低血糖イベントは、時に意識障害などをきたし得る深刻な病態の1つと言える。Science Dailyの報道によると、研究を率いたLeandro Pecchia博士は「私たちのイノベーションにより、睡眠中を含むあらゆる状況において、心電図波形から低血糖を自動検出できる可能性を示した」としている。
AIの適用により、心電図波形は「元来想定されていた以上の情報を含んでいること」が次第に明らかとされている。循環器領域を中心に、心電図波形が持つ疾患発症への予測力など、研究計画の余地は多分にあるため、今後医療AI研究の1つのトピックとなる可能性が高い。