骨粗鬆症は、骨量が減って弱くなり骨折しやすくなる、あるいは既に骨折してしまっている状態を示す。高齢化とセットになる社会問題であるが、実際に骨折した高齢者が骨粗鬆症の治療と検査にたどり着かないケースも後を絶たない。骨粗鬆症の治療と予防を必要とする患者をもれなく拾いあげるため、オーストラリアの研究チームが開発したのは、放射線検査のレポートから骨折に関する情報を識別するAIソフトウェア「XRAIT」である。同研究についてはメディアDiagnostic Imagingで報じられている。
内分泌医学の国際学会ENDO 2020の演題として同研究は採択され、Journal of the Endocrine Societyに収載される予定である。AIソフトウェアは自然言語処理によって骨折とそれに関連する用語を放射線検査レポート内から検索してリスク患者を選別する。さらには骨折部位別の報告スタイルに合わせてアルゴリズムが強化されている。従来の検査レポート記述が手作業で参照されていた結果と比べ、XRAITは潜在的な骨折を5倍近く拾いあげることができたという。現在のところ、ソフトウェアは感度69.6% / 特異度95%として報告されている。
研究グループはXRAITによって、人の手作業による記録の見逃しや、検出までにかかる長いプロセスを改善しようとしている。その結果、骨粗鬆症患者が速やかに確実に治療へ結びつき、次に起きる骨折を減らすことを目標とする。日本においても、病院内では「骨折(骨粗鬆症)リエゾンサービス」という他職種連携でリスク患者を拾いあげる取り組みが広がってきている。そういった場面において、XRAITのような1次スクリーニングが実装されてゆき、患者に真のメリットがもたらされる効率的な医療が展開される将来像を期待したい。