英国NHSでは糖尿病患者の網膜症をスクリーニングするため、年1回の眼科検診プログラム(DESP: Diabetic Eye Screening Programme)が設置されている。DESPではAIソフトウェアによる自動網膜画像解析システム(ARIAS: automated retinal image analysis systems)のひとつ「EyeArt」の評価が行われ、研究成果は学術誌 British Journal of Ophthalmologyに発表された。
EyeArtの開発元Eyenuk社のプレスリリースによると、同社の技術によってDESPに関わる人間の作業量は半減し、英国内で年間数百万〜1千万ポンド以上のコスト削減が見込めるという。網膜損傷の自動検出は、専門家への紹介が必要なレベルで95.7%の精度、視力低下につながるような重篤なレベルでは100%の精度をうたう。スクリーニング検査の大半は異常の兆候なし・追加処置不要となり、人間の評価者が診断するべき画像の数は、十分安全な範囲として全体の半数に削減可能であると研究成果から示された。
英国ではCOVID-19拡大に伴うロックダウンの影響から、眼科検診予約の未処理・積み残しが多数発生している。そのような過剰負荷となっている医療システムの正常回復へ、EyeArtのようなARIAS技術の貢献が期待されている。医療資源の不足が問題とされる諸国においても、視力低下を回避するための糖尿病患者の眼疾患スクリーニングの重要性は増しており、英国型のプログラムが世界に展開された場合、2030年には年間20億万枚の画像チェックが自動化される試算がなされている。