人工知能で人間の嗅覚をモデル化

米カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームは、「化学物質が人間にどのような匂いを与えるか」を正確に予測するため、機械学習を用いた研究に取り組む。彼らが得た成果は、単に香料などのコスメティック産業や食品業界にインパクトを与えるのみでなく、嗅覚機能をより深く理解する観点から基礎医学にも大きな示唆を与えるものとなっている。

iScienceに収載されたチームの研究論文によると、「匂い情報のない新しい化学物質が人にどのような匂いを与えるか」を高精度に予測する機械学習アルゴリズムを開発したという。約400に及ぶ嗅覚受容体のうちのいくつかが活性化されると、人は匂いを感じる。それぞれの嗅覚受容体は一意の化学物質セットによってアクティブとなるため、大規模な嗅覚受容体群は広大な化学空間を検出できるとも言える。ただし、各受容体とその組み合わせが「どのようにして異なる知覚特性に寄与するか」が詳細に理解されていないため、既知でない化学物質の匂いを正確に特定することは難しかった。

研究チームは50万種の化合物をスクリーニングし、34種類の嗅覚受容体に結び付く新しいリガンドを探索するとともに、嗅覚受容体の活動を推定できる機械学習アルゴリズムが「匂いの多様な知覚特性も予測できるかどうか」に焦点を当てて検証を進めた。結果的に嗅覚受容体の活動が、化学物質による146の異なる知覚を予測していることを示し、また対象となる嗅覚受容体全てではなく、ごく一部からでも十分に知覚を予測し得ることも明らかにした。本研究アプローチは、望ましい匂いのする揮発性化学物質をインテリジェントに設計することも容易とするため、革新的萌芽研究となる可能性がある。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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