新規医薬品開発に必要とする膨大な時間と費用の圧縮のため、既存薬を再開発する「ドラッグリポジショニング(drug repositioning)」への注目が続く。精神・神経疾患でのドラッグリポジショニングを効果的に検索・絞り込みを行うため、ネットワーク医学という機械学習アプローチを用いた研究が学術誌 Translational Psychiatryに発表されている。
同研究では、ブラジルのサンパウロ研究財団の研究者らがIBM Watson for Drug Discovery(WDD)と独自開発のプログラムを用い、過去50年における数百万件におよぶ科学論文のマイニングを行い、疾患と遺伝子と薬剤に関する知識をつなぐネットワークを構築した。ネットワークの中から再発見された精神・神経疾患の重要な遺伝子を標的とする薬剤は、その疾患治療のために用いられたことは一度もなかった。近日中に研究グループは新規リストアップされた薬剤の統合失調症に対する検証研究を予定しているという。
また、ドラッグリポジショニングはCOVID-19に対する治療薬探索としても脚光を浴びている。同研究グループが開発した候補薬物のAIスクリーニング手法は、様々な感染症治療薬に対しても応用可能とされる。ネットワーク医学は現在の危機的状況において研究分野から焦点を絞り込むためにさらなる貢献ができるだろうか。