アンビエント・インテリジェンス(ambient intelligence)は「空間・環境内のセンサーから人の動きなど健康に関する情報を解析する技術」として、近年の医療AI領域でひとつのトレンドとなった概念である。
学術誌Natureに9日付けで発表された「アンビエント・インテリジェンスでヘルスケアの暗がりを照らす」と銘打たれた論文は、171報の引用文献から同領域の技術を網羅的に考察している。スタンフォード大の研究者らによってまとめられた内容には大きなトレンドとして「安価で利用しやすい赤外線センサーによる医療および介護環境のリスクへの取り組み」と、「センサーからの入力がAIアプリを訓練する機械学習の発展」が示されている。赤外線センサーの応用例として、病室へ入る人が手を洗ったかを識別し警告を発する技術が挙げられている。また、スマートフォンに搭載されるような高解像度のセンサーは、AIアルゴリズムを訓練するのに十分正確なデータを集めることが可能になったと評する。
家庭や介護施設におけるアンビエント・インテリジェンス技術は、今後もプライバシーへの配慮といった倫理的な課題があると著者らは指摘する。その一方で技術の発展の方向性が様々な医療のリスクを抑制する可能性が示されており、アンビエント・インテリジェンスという研究領域に今後も大きな期待が集まり続けるだろう。