米国国立衛生研究所(NIH)によると75歳以上の半数が何らかの聴覚サポートを要する状況にあり、高齢化にともなう補聴器への需要は高まる一方である。しかし、従来の技術による画一的な補聴器の調整では、個々の感性の違いなどから着用者の満足度を高める難しさがあった。AI/機械学習による技術革新は補聴器の分野にも進出し、個別化された自動調整機能をもつ補聴器の市販が進む。
国際的な補聴器メーカーWIDEXがPRNewswireに提供したプレスリリースで、同社はリアルタイムAIによる聴感コントロールが可能な補聴器を初めて提供したメーカーと謳っている。「自動環境適応機能」はユーザーの環境を常に分析して、環境特有のノイズを抑え、会話音声を聞き取りやすくしたり、コンサートなどでは臨場感あるサウンドを提供することもできる。「サウンドセンスアダプト」はユーザーがボリュームを上げるなど設定切り替えを行う度に学習し、同様のシチュエーションでの自動調整機能をもつ。「サウンドセンスラーン」は機械学習アルゴリズムの恩恵で、従来では膨大な回数を必要としていた個人の好みに合うように調整するA-B比較テストが十数回にまで省力化でき、2,000パターン以上の設定が可能となる。
Widex社の聴覚学責任者Lise Henningsen氏は「私たちの研究で、補聴器ユーザーはAI/機械学習によるパーソナライズされた設定をとても好み、80%の人がこの機能を他者に勧める結果でした。AI搭載の補聴器は、バーチャルアシスタントやスマートウォッチと並ぶ、新しいライフスタイル『ヒアラブル(hearables)』に近いものといえるでしょう」と語っている。