新型コロナウイルスとの戦いがワクチン接種という次の段階を迎え、SNS上では反ワクチン運動への規制が強化されている。Twitter社が、非科学的な偽のワクチン情報tweetを繰り返すアカウントに対し、永久凍結する方針を表明したことも最近話題となった。不正確で有害な情報拡散の問題として「インフォデミック: infodemic(過去記事参照)」がある。その背景を解明するため、「SNS上でCOVID-19に関連する『健康への信念(health beliefs)』がどのような影響を受けているかAI/機械学習アプローチで解析を行った研究」が米ノースウェスタン大学のグループから学術誌 Journal of Medical Internet Researchに発表されている。
ノースウェスタン大のニュースリリースでは、同研究について紹介している。その方法として、Twitter上で約897万人のユーザーと約9269万件のtweetに対して、健康に関する信念を定量化する4つの指標からなるhealth belief model(HBM)に従って機械学習手法で解析した。その結果、health beliefsに関する投稿を行うユーザー数は基本再生産数R0が7.62と算出された。このR0は感染症疫学でなぞらえると激しい感染力をもっており、インフォデミックが激化する一因と考察される。また、学術発表のような科学的イベントと、政治的演説のような非科学的イベントとでは、SNS上でhealth beliefsの傾向に与える影響力が同等であることも観察された。
同研究は、SNSがCOVID-19そのものより「ある意味での感染力が強い」と主張したユニークな研究である。同論文の著者のひとりでノースウェスタン大の主任AI研究員であるYuan Luo氏は「科学者が科学について人々に伝えることに注力しなければ、無責任な発言をする人たちによって簡単に意見を相殺されてしまう。そして一般ユーザーはTwitterで自身が目にしたものが自分の態度を形成していることに無自覚で、情報の偏りを無視し、事実関係確認・ファクトチェックせずに拡散していることに気付く必要がある」と語っている。