子宮頸がんの検診プログラムの一環として、子宮頸部から採取した細胞診によるスクリーニングを行うことは、発生率と死亡率の低下に貢献してきた。ヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチン接種が子宮頸がんの罹患率を大幅に低減できる可能性を示しているが、ワクチン接種プログラムが有効に機能していない国・地域では、多くの女性がリスクを抱え続けることとなる。そのため従来の細胞診は引き続き重要なスクリーニング検査となるが、やはり医療資源の限られた地域での一般検査化には困難があり、細胞診に対するAI支援の期待が高まっていた。
スウェーデンのカロリンスカ研究所からのリリースでは、「ケニア農村部で展開されたAIで子宮頸部の細胞診異常を検出する研究」が紹介されている。学術誌 JAMA Network Openに発表された同研究では、ケニア農村部の診療所の患者740人から採取された子宮頸部細胞診の塗抹標本をポータブルスキャナーでデジタル化し、モバイルネットワークでクラウドベースの深層学習システムにアップロードして解析した。標本の約半分をプログラムの学習、残りを精度評価に使用し、病理医の評価と精度を比較した。その結果、深層学習システムによる「前がん病変」の識別は感度96-100%を示し、「高悪性度の病変」で偽陽性は発生しなかった。また、病変がない陰性の識別に関しては78-85%が病理医の診断と一致した。
カロリンスカ研究所の国際公衆衛生学教授であるJohan Lundin氏は「携帯型オンライン顕微鏡によって、深層学習システムは子宮頸がんスクリーニングの『バーチャルアシスタント』として機能します。今回の方法により、病理医や検査機器が不足している低所得国において子宮頸がんを効率的に発見することができます。低コストの検診プログラムをそれらの国で提供可能となるでしょう」と語った。