2型糖尿病においては近年、早期診断や治療法の改善により「寛解」と呼ばれる「症状や検査値異常が消失した正常に近い状態」を維持することが可能となってきた。米国糖尿病学会(ADA)は「寛解」の定義として「糖尿病治療薬を服用せずに正常な血糖値を3ヶ月以上維持できること」としている。患者のデジタルデータから「もう1人の自分」を仮想的に再現し、介入効果をモデル上で評価・最適化することのできる「Digital Twin(デジタルツイン)」プラットフォームによって、2型糖尿病の寛解率を有意に向上させる研究が、インド・ベンガルール糖尿病センターの研究者らによって報告されている。
本研究の最新の成果は、第82回ADAのポスターセッションで発表された。この報告では、Twin Precision Treatment(TPT)と呼ばれるデジタルツインプラットフォームに基づく治療で、患者へ栄養・睡眠・活動を精密に指導介入した効果を検証している。319名の2型糖尿病患者を対象とし、90日間ごとの治療成果として検査項目「HbA1c」を追跡した。その結果、180日経過時点での解析では、TPT患者の94.9%(189/199例)が投薬なしまたはメトホルミン単独内服でHbA1c 6.5%未満を達成した。180日後のHbA1cの変化は、TPT患者群で「-3.3%」、標準治療群で「-0.39%」と有意な差を示した。さらにTPT患者群では、ADA基準での糖尿病寛解率が83.9%(167/199例)であった。また、TPT治療介入によって、インスリン治療患者9名全員が90日以内にインスリン使用を中止できた。
研究を主導したParamesh Shamanna氏は「我々の研究成果は、デジタルツイン技術によって、従来の投薬中心の2型糖尿病管理から、投薬不要の寛解達成へと変化させられる可能性を示した。この治療プログラムが患者の満足度、生活の質、医療費全体に与える影響は大きい」と述べている。
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