人間はおびただしい数の微生物と共生しているが、相互作用として重要な役割を果たすのが細菌である。ヒトに定着した細菌の9割は消化管におり、特に腸内細菌叢は各種疾患との関わりで、近年大きな注目を集めている。今回は、腸内細菌叢のAIによる解析を通した感染制御研究の一例を紹介する。
米ボストン・Brigham and Women’s Hospitalの公表によると、同院の病理医でHarvard Medical Schoolの助教・Georg Gerber氏は、AIを利用した腸内細菌叢の解析により、どの種の細菌がどのようにC. difficile(院内感染の原因菌として広く知られる)の感染を抑制するのかを研究しているという。研究チームが開発した機械学習アルゴリズムは、C. difficileへの感染リスクが高い患者を識別し、感染・反復感染の予防に役立てることができるとのこと。
日本においても、病院や介護施設などでのC. difficileの集団感染が時折みられ、問題となっている。多くは軽度の下痢など深刻な病態とならず軽快するが、高齢者や免疫能の低下した者においては致死的となることもある。手洗い・うがいだけでない、多面的な感染制御法の開発が期待されている。