生前と死後のパノラマX線(歯列全体を回転撮影したもの)を比較して個人の身元を特定する手法は、法医学関連の歯科学として信頼されている。その手法を改善し自動化する技術を紹介する。
ドイツ学術誌RöFoでは、生前と死後のパノラマX線画像のデータベースから個人の身元を自動でマッチングする技術が報告された。MathWorks社の画像認識ソフトウエアComputer Visionと解析ツールMATLABが利用されている。治療や老化で歯の一部の特徴が失われたり追加された場合でも適切にマッチングできたという。
東日本大震災を経て、法医学的な歯科学は遺体の身元確認のために重要な手法として日本歯科医師会でマニュアル化された。震災当時の歯科医たちの地道な努力で多くの遺体の身元が特定されたが、その労力は相当なものだったといわれている。マニュアル内ではX線撮影がフローに組み込まれ、被災地の最前線でも持ち込みやすく作業が簡易なデジタルデータとしての特性が活かされる。将来の大規模災害への備えとして発展が望まれる一方で、歯のデータとしての堅牢性は生体認証技術としても注目されている。