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PTSDを音声分析で診断するAI – 米退役軍人での研究から

心的外傷後ストレス障害(PTSD: Post Traumatic Stress Disorder)は、命の危険を感じるような強いショック体験から時間が経ってもなお、恐怖などに悩まされる精神疾患である。戦場から戻った軍人や震災経験者、犯罪被害者でみられることが多い。面接や自己申告による診断方法には偏りがあり、何らかの客観的な指標が求められてきた。

Medical Xpressの報道によると、ニューヨーク大学医学部の研究グループが、AIによる音声分析からPTSDを診断する方法を発表した。学術誌Depression and Anxietyに収載の論文は、イラクやアフガニスタンから帰還した米国退役軍人のPTSDを研究対象としている。機械学習手法ランダムフォレストで、患者の話し方の特徴(遅い、変化が少ない、単調である、活気がない)を1時間の面接から分析し、PTSD診断で89%の正解率を達成したという。

PTSDのメカニズムは解明途上であるが、同研究は、外傷のイベントが感情や筋肉の緊張を処理する脳の回路を変えてしまうという理論を基礎としている。研究グループの精神科医は「音声分析は、安価で遠隔診断が可能で、なにより患者に負担が少ない。将来的な自動診断システムの有効な候補となり得る」と述べている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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