健康の社会的決定要因を抽出する自然言語処理アルゴリズム

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近年、Social Determinants of Health(SDOH:健康の社会的決定要因)に大きな注目が集まっている。疾患の身体的リスク因子を超え、上流に潜む社会的・経済的要因が個人の健康を規定し得るという考え方だ。社会疫学者を中心に、SDOHと健康イベントについて多くの研究が行われるなか、診療録に自由記述された文書から、SDOHとその周辺情報を拾い上げる技術が生まれている。

Healthcare IT Newsの報道によると、ボストンで行われたHIMSS Machine Learning and AI for Healthcareで同技術が公開されたという。自然言語処理の可能な機械学習アルゴリズムにより、医療機関に蓄積された構造化されていない診療録や関連文書を解析することで、患者個人が抱えるSDOH(教育水準、家庭内暴力、貧困、衣食住環境や交通事情など)を抽出することができるとのこと。

SDOHを取り扱う社会疫学は公衆衛生に大きな影響を与え、比較的新しい学問分野として注目を受ける。一方で、生物学的因果関係の不明確さなどから臨床専門家への浸透は遅れ、日常臨床の場においてSDOHに十分な注意が払われることは一般的ではない。診療録からの自動抽出によるアラートは、患者個人ごとの背景に応じた疾病理解にも繋がる可能性があるだろう。

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TOKYO analytica
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1. M.Okamoto MD, MPH, MSc
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。専門はメディカルデータサイエンス。ロンドンでのベンチャーエンジニアを経て、英国内の大学で医療データベース研究に従事。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。