X線撮影によるマンモグラフィーは、乳がん早期発見のための基本的な検査手法である。一方、熱の分布を赤外線撮影するサーモグラフィーが、乳がんスクリーニングに有効という説も唱えられてきた。しかし科学的根拠が乏しく、マンモグラフィーを代替するには至っていない。
インドのメディアYourStoryは、サーモグラフィーをAIアルゴリズムで解析する乳がん診断技術Thermalytixを開発した、インドのスタートアップNiramai社を紹介している。マンモグラフィー撮影時の乳房圧迫の痛みを避けられる点や、アジア圏女性に見られる高濃度乳房でのマンモグラフィーのがん検出率低下に対抗できるとして、同社はサーモグラフィーの利点を強調し、有効性の検証を進めている。日本のドリームインキュベータ社が資金調達をリードしていることも話題となった。
米国FDAは2019年2月のプレスリリースで、「乳がん診断にサーモグラフィー単独でマンモグラフィーを代替すべきではない」と警告している。これはサーモグラフィーの有効性を不当に強調しマンモグラフィーを行わない民間団体やホメオパシー・クリニックに対抗する声明で、これまでも複数回出されてきた。果たして、AIによる乳がんサーモグラフィー診断は従来の技術的な限界を超えて、科学的根拠を確立できるだろうか?