AIによる血液脳関門透過性の予測

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人によって作り出される数多の候補化合物のうち、実際の医薬品となるのは極めて少数である。中枢神経系に作用する薬剤においては、初期の創薬プロセスとして、血液脳関門(BBB)を化合物が通過できるかが大きなポイントとなる。近年、AIを利用したBBBの透過性予測が注目を集め、多くの研究者がこのテーマに取り組んでいる。

BBBは血中から脳内への物質移行を妨げる機能だが、脳毛細血管のトランスポーターなどによってその透過選択性(どの物質を通過させ、どの物質を通過させないか)は複雑に制御されている。AIによる正確な予測を実現させるにはバランスの取れた学習データを用意する必要があるが、2018年以前は比較的偏った学習データに基づく知見が多く、偽陽性割合の高い可能性が指摘されてきた(参照)。2019年、研究報告の質はより洗練され、各予測モデルを比較・検証することも可能な段階に入っており、適切なレビュー論文の発表が待たれている。

これまで、BBBの精緻な分子機構解明でしかアプローチできなかった透過性予測は、深層学習技術の高まりにより、機序の明確化さえ後回しにし得る大胆な予測ツールを得ようとしている。脳透過性分子の設計における新しい戦略として、創薬業界からの期待も非常に大きい。

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TOKYO analytica
TOKYO analyticaは、データサイエンスと臨床医学への深い造詣を武器とし、健康に関するあらゆるモノ・コトのエビデンス構築・普及をお手伝いするメディカルコンサルティングプロジェクトです。
The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。専門はメディカルデータサイエンス。ロンドンでのベンチャーエンジニアを経て、英国内の大学で医療データベース研究に従事。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。