結核は世界の10大死因のひとつであり、所得の低い国で流行する特徴をもつ。そのため、新興国では社会全体の健康を脅かし続けている。WHOが結核撲滅のキャンペーンを掲げ、流行を防ぐことが理論上可能にもかかわらず、未だ終息が見えていない。10万人あたりの結核罹患率が100名を超える高蔓延国のひとつにインド共和国がある。同国の保健家族福祉省は、結核との戦いにAIを応用すべく、慈善団体ワドワニ財団が運営するAI研究所との連携を始めた。
米メディアOpenGovでは、同省が結核撲滅に向け採用を検討するAI技術を紹介している。結核治療は複数の抗菌薬を組み合わせ約半年もの長期に渡る。そのため、支援が不十分であれば治療から脱落し、感染拡大と薬剤耐性が問題となる。厳密な服薬を支援する技術として、モバイル機器による服薬遵守ツール「Pill-in-Hand」、電話による自動音声応答とショートメッセージサービス、携帯電話網に接続され圧感知センサーを備えた自動配薬ボックス、治療計画を守っていることを患者が報告するモバイルアプリなどが挙げられている。
以前紹介したフィリップスのFuture Health Index: 未来の医療環境指数調査(過去記事)によると、インドの医療AI利用率は46%で世界15カ国平均を超えている。同調査では、デジタル技術に支えられた医療を歓迎するインドの風潮がみられる。例えば、電子カルテの個人データに医療従事者が積極的にアクセスすることを希望(87%)、モバイルアプリで医学的アドバイスを受けることに不安を感じない(67%)といった意識調査結果がある。これらの国民意識に支えられ、インド政府はAIを活用し、2025年までに結核の流行を終わらせる計画を進める。一方、先進国でありながら中蔓延国に分類される日本の特殊な結核流行事情はよく話題となる。2つの国で将来的にどのような成果が出てくるだろうか?