日本の富山を発祥とする「置き薬」は家庭や職場に薬箱を設置して、使用した薬の代金を後払いするシステムである。300年以上の歴史を持つモデルだが、薬事法の制限などから現在の日本では規模は縮小し過去のものとなりつつある。そのビジネスモデルをアフリカの僻地に持ち込み、医療資源の不足、インフラの未整備、医療アクセスの困難さを解決しようとする日本のNPO「AfriMedico」がある。
Tokyo Reviewによると、AfriMedicoのOKIGUSURIは、伝統的な医薬品販売モデルに、センサーとAIを使用して配置された医薬品の使用状況を追跡する。タンザニアの僻地などに配置され、現地のスタッフはスマートフォンで薬品の箱を撮影しサーバーにアップロードする。加えてAIアルゴリズムが使用状況の分析精度を向上させている。団体の創設者である町井恵理さんは薬剤師としてのキャリアののち、アフリカでのボランティア活動を経て、「置き薬」のビジネスモデルを構築した。アフリカの人々の健康への寄与には、配置薬という手段以外にも教育・啓発が必須と考え環境整備を推進している。
ビジネスモデルを輸出する日本にとっても、アフリカで承認される日本の医薬品の種類が増えれば、製薬業界に発展のチャンスがある。また、日本国内で過疎化が進む地域では、十分なサイズの薬局が維持できるかという課題があり、医療インフラが時代に逆行して後退する危機がある。アフリカで発展した技術を逆輸入することで、伝統的な置き薬の価値が復活し、医療過疎地のインフラ整備につながる可能性も秘めている。