医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AIがトロントの医師に常時セカンドオピニオンを与える - UHN Coral ReviewとPathfinderプロジェクト

AIがトロントの医師に常時セカンドオピニオンを与える – UHN Coral ReviewとPathfinderプロジェクト

カナダ最大の都市トロントを本拠とするUniversity Health Network(UHN)はカナダおよび北米でも最大級の医療研究機関である。現在UHNは、理工系で国内を代表するウォータールー大学、そしてトロントを本拠とするAI研究所Vector Instituteと協力し、自国内の医師に対して常にセカンドオピニオンを与えるAIソフトウェアの実用化を進めている。

CityNews Torontoの報道によると、AIソフトウェアは特に放射線科医と病理医に対して画像分析によるフィードバックを与えることを目的とする。UHN内の「Coral Review」と呼ばれる既存のプログラムに基づきソフトウェアは構築される。画像診断精度のばらつきを無くすため、AIによるセカンドオピニオンが地域の医師へ100%全例で与えられることを目標としている。AIアルゴリズム訓練のため、25,000件の高品質X線画像を利用し、放射線科医による専門研究グループが活動している。最終的な診断を解釈する医師の役割は変わらず、AIが取って代わるものではないと研究機関のシニアディレクターGoonaratne氏は語る。

放射線画像読影と病理診断で、医師の最終判断をAIが補完する潮流は明確となった。トロントの強力な研究体制は、AI参入を歓迎する医師らの意見と一致する(過去記事)。UHNで展開されるAIはVector Instituteによる「Pathfinder」プロジェクトのひとつで、AIがヘルスケアへ効果的に統合される方法を模索している。最新のAIプロジェクトでは、新生児敗血症の発生タイミング予測や、ダニの種類特定でライム病のリスクを確認するスマホアプリ開発などが続々と登場している。今後もトロント発の医療AIから目が離せないだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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