医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例Microsoftと米国医療保険Humanaが団塊世代のヘルスケアを再考するパートナーシップ

Microsoftと米国医療保険Humanaが団塊世代のヘルスケアを再考するパートナーシップ

クラウドプラットフォームMicrosoft Azureによって米国UCLAが医療データを統合する動きを以前に紹介した(過去記事)。同様に、大手プラットフォーマーと医療機関の様々な提携が強まっている。Microsoftは新しいパートナーシップとして、アメリカの医療保険会社Humanaとの提携を発表している。

Forbesの報道によると、メディケア加入者400万人を管理するHumanaは、Microsoft Azureを活用し、AIや音声技術を組み合わせ、保険加入者の健康管理を行なってゆく。7年間というパートナーシップ期間で、加入者の健康履歴を長期的視野によって管理する。一例として、まだインフルエンザ予防接種を受けていないメンバーの位置情報から、近隣で予防接種を受けられる診療所を案内し、受診可能な日時を通知するなどの介入方法がある。アメリカではベビーブーム世代がメディケアの医療給付の対象として比率を高めるにつれて、政府・患者自身・保険会社、それぞれの医療費支払い能力が脅かされてきている。そのような現況で、テクノロジー企業が医療保険会社を支援し、患者の健康推進に取り組むことで、医療コスト全体の削減を図る狙いがある。

Microsoftは他にも、薬局チェーンWalgreensと提携し、ドラッグストアや診療所をあらゆる場面で消費者とつなぎ、デジタルサービスへのアクセスを可能にしようとしている。今回のMicrosoftと同様の取り組みとして、AppleはCVS Healthの医療保険事業Aetenaと、加入者ひとりひとりにパーソナライズされた健康目標を支援する契約を発表している。今後もMicrosoftは、Apple、Amazon、Googleなどテクノロジー大手とのヘルスケア分野における競争を続けてゆく。目指すのは社会全体における医療のコストダウンであるが、その過程では熾烈な顧客囲い込みが繰り広げられている。患者の健康増進という前提が見失われることがないよう、動きに注視してゆくのがよいだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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