日本でディープラーニングを中心に研究開発を行うスタートアップ企業Preferred Networks(PFN)は2019年12月5日、自社開発していたDeep Learningフレームワーク「Chainer」から事実上の撤退を発表した。PFNはFacebook陣営のプラットフォーム「PyTorch」への参画と環境の移行を進めるとしている。AI関連プラットフォームをめぐる競争から後退したとみるか、時勢をよくみた英断か、日本の開発者達に様々な反響を呼び起こしている。米国発プラットフォームが寡占を進めるなか、かたや中国側の視点はどうだろうか?
South China Morning Postによると、中国でもFacebookのPyTorch、およびGoogleのTensorFlowがオープンソースプラットフォームとしてシェアを大きく二分している。商業的に成功している中国のAI企業が米国発のコアテクノロジーを採用している事実が、中国のAIインフラの弱さを示すとの指摘もある。中国発の対抗するプラットフォームとしては百度(Baidu)のPaddlePaddleがあるが、国際的な支持を得るには至っていない。
PyTorchおよびTensorFlowで既に確立した技術を、あらためて自主開発することはいわゆる「車輪の再発明」に該当するだろうか?日本では米国発の技術を信用して活用するうえで地政学的リスクが低い。一方で中国にとっては世界を二分するAI開発競争の中、米国関連のプラットフォームから締め出され遮断されるのを危惧する向きがある。技術開発者の間では国際的な壁は越えられる課題とみて貴重な開発人材の分散を避けるのか。思いもよらぬ政治的な係争に巻き込まれることに備えて自国のプラットフォームを強化するのか。PFNの今後の動きにも大きな注目が集まるだろう。