米国の全国調査では2歳から17歳までの約9.4%がADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されているという。年齢あるいは発達に不相応な過活動・衝動性・不注意を特徴とする行動障害として診断されるADHDは、認定された子どもにとって、学習や社会関係構築のリスクが高く、その家族にも負担が多い。ADHDに対する早期介入の有効性が提唱され、診断精度の改善が重要であった。
ADHD診断には、一連の症状と行動をベースとしたテストが主流で、画像検査での確定的な診断には制約があった。近年、領域ごとの脳血流を視覚化するfMRIという検査法からADHDの診断を補助する試みがひろがり、AIによる画像解析が期待されていた。学術誌Radiology: Artificial Intelligenceに、Deep LearningでMRIによるADHD診断能力を高めるアプローチが発表されている。
Medical Xpressで紹介されている同研究は、fMRIで検出される脳の血流から脳内のネットワークをマッピングする「コネクトーム(connectome)」という手法を複数組み合わせてDeep Learningモデルを構築している。従来は単一の脳区画に基づくコネクトームに焦点を当てられていたが、シンシナティ大学と小児医療センターのグループが、複数のコネクトームマップを使用するマルチスケールメソッドを開発し、ADHDを検出するパフォーマンスが大幅に向上したという。
主任研究者のLili He博士は「私たちの研究はコネクトームのもつ予測能力を強化しています。この手法はADHD以外にも神経学的疾患に一般化が可能です。早産児の認知機能障害予測のためすでに応用されて、2歳の段階でのスキャンから神経発達の転帰を予測しています」と語り、研究の発展性を示している。