医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例BenevolentAIが特定した新型コロナウイルス治療薬の可能性

BenevolentAIが特定した新型コロナウイルス治療薬の可能性

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、検疫など封じ込め対策の一方で、研究者らは既存の抗ウイルス薬が治療薬として再利用できる可能性を探っている。中国では既にHIV治療薬であるアッヴィ社のカレトラ(ロピナビル/リトナビル)やヤンセンファーマ社のプリジスタ(ダルナビル)など10以上の薬剤で試験が申請されているという。

Equities.comではコロナウイルス治療薬検索に取り組むロンドン拠点のBenevolentAI社を紹介している。同社は独自のAIプラットフォームにより生物医学情報を解析し膨大な候補から可能性の高い治療薬を絞り込む。その結果、関節リウマチ治療薬のバリシチニブ(baricitinib)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬となる可能性を予測している。

学術誌The Lancetに掲載された同研究によると、ウイルス感染のプロセス途上にあるAAK1(Adaptor-associated protein kinase 1)の機能を阻害することで治療効果が期待されるという。BenevolentAIは378種の既知のAAK1阻害剤から47の化合物に絞り込み、そのうち6つがAAK1の阻害に高い親和性を示し、その中で1つだけが高用量での副作用を起こしにくいと考えられた。それがイーライリリー社とインサイト社によって開発されたバリシチニブ(製品名オルミエント)であった。

現時点でこのような薬品が真に治療効果を持つ保証はできないが、本格的な新規治療薬開発までの時間を大幅に節約できるかもしれない。BenevolentAIの共同創設者Ivan Griffin氏は「圧倒的な量の生物医学情報からAI技術でなければ見逃してしまうような知見を得ることができた」と語っている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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