多くの成人にとって身近な腰痛症であるが、その扱いは決して簡単ではない。米国を中心とした鎮痛薬の濫用、いわゆるオピオイド危機(opioid crisis)は腰痛症との関連も強い。腰痛の質の判定をAIが行うことで、管理法の改善と不必要なオピオイド処方を抑制しようとする試みがある。
科学系ニュースメディアScienceDailyでは、マウントサイナイ病院の研究グループが設計した「電子カルテ内の医師記述から、腰痛が急性か慢性なのかを判定できるAIモデル」を紹介している。同研究は学術誌Journal of Medical Internet Researchに発表された。16715人 / 17409件の電子カルテ記述からAIモデルは訓練され、AUC 0.98 / F値 0.70 という良好な精度で急性腰痛症を識別できた。
電子カルテ上では、急性と慢性の腰痛症は混在され同一コードで記録されていることも多く、記述の詳細をさかのぼることでしか区別できない側面もあった。このAIモデルによってコード付け・医療費請求・治療精度での向上が期待される。マウントサイナイアイカーン医科大学の公衆衛生学准教授 Ismail Nabeel氏は「AIの正確な判定によって、患者が通常生活にすぐに戻るか、休息と医師による診察フォローアップを必要とするか、決定する助けとなるでしょう」と語る。