大腸の粘膜が原因不明の炎症を起こす指定難病のひとつ潰瘍性大腸炎では、病気の活動と寛解を内視鏡で評価する。その内視鏡観察の際に、粘膜組織を侵襲的に採取・生検する必要性から一定のリスクが避けられないという課題があった。東京医科歯科大学のグループは、AIシステムによって生検を行わず内視鏡画像から潰瘍性大腸炎の寛解期を特定する研究を学術誌Gastroenterologyに発表した。
医療ニュースメディアMedical Dialoguesでは同研究のディープニューラルネットワークシステムが紹介されている。40,758枚の大腸内視鏡画像および6,885件の生検結果からアルゴリズムは構築された。その後875名の潰瘍性大腸炎患者で行われた前向き研究でアルゴリズムの精度は検証され、内視鏡観察上の寛解を90.1%の精度、生検に相当する組織学的な寛解を92.9%の精度で特定できたという。
東京医科歯科大学のアルゴリズムは、内視鏡専門医と同等のレベルを達成していると考えられている。この成果によって、観察者によってばらつく診断精度を補助し、生検の侵襲によるリスクとコストを回避できる可能性が期待される。同研究はソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの協力を受けており、内視鏡画像検査領域を得意分野とする日本の医療機器産業の本領発揮ともいえるだろう。