各国の新型コロナウイルス感染症 COVID-19 への初期対応が振り返られるなか、台湾の感染率の低さ(3月8日までに45件)が注目されている。中国との関係性から人的な往来が盛んであり、感染者数が世界第2位になるだろうという周囲の予測を完全に覆したことは学術的にどう評価されるか。権威ある米国学術誌 JAMAに米スタンフォード大の王智弘 准教授(Dr. Wang)らが執筆した「台湾のCOVID-19対応」が掲載された。
米国の金融関連メディア TheStreetには、Dr.Wangに対するメールインタビューが掲載されている。台湾の45件という発症数が検査数不足ではなく初期の予防対策に由来するとDr. Wangは強調する。いち早く開始された渡航者の検疫とそれを支えた電子システム、国民健康保険と統合したビッグデータ解析、渡航歴や臨床症状からの感染リスク分類、隔離措置、マスクなど防護設備・各種医療資源の適確な配分、国内への公衆衛生教育と周知など、全方位的な施作が台湾では有効に機能した。同インタビューでは、米国での国民保険プログラムの欠如そのものが今後のCOVID-19対策の主要な論点ではないと触れている。米国でもハイテク企業・州知事・政府機関の連携で対処できる十分な潜在能力があると結語した。
台湾がかつて経験したSARS(重症急性呼吸器症候群)の蔓延は、今回の対策へ確実に活かされている。Dr. Wangは携帯端末の普及とAI・機械学習技術で迎えた公衆衛生の革新の時であるとも語っている。先端技術が独り歩きするのではなく、運用する人材と組織、そこにある強力な意志こそが重要であると、台湾の事例から学ぶことは多い。