代替ではなく能力拡張 – 皮膚科医と一般市民の診断精度を向上させるAI

皮膚科領域で発展を遂げるAIは、メラノーマ(悪性)と母斑(良性)を鑑別するなど専門医に匹敵する結果を示している。しかしそれは特定の狭い問題についてであり、炎症性疾患や感染症のような数多くの皮膚疾患が混在する実臨床に近い環境での性能を検証する必要性が指摘されてきた。Journal of Investigative Dermatology誌に、ディープラーニングをベースとしたAIアルゴリズムが皮膚科医と一般市民の初期診断精度を向上させた研究成果が報告されている。

メディアEurekAlert!では、韓国発の「ディープニューラルネットワークで医療従事者の皮膚がん診断と134種の皮膚疾患鑑別を能力強化する」研究について紹介している。アジア人と白人合わせ22万枚の皮膚画像で訓練されたアルゴリズムは、それ自体の診断性能は皮膚科研修医とほぼ同等、皮膚科専門医のパフォーマンスをわずかに下回るくらいであった。研究が強調する利点は、試験参加者にアルゴリズムの回答を通知して一次診断を修正できるようにすると、参加した皮膚科医の悪性腫瘍診断の感度を77.4%から86.8%に向上させ、一般市民で感度47.6%から87.5%に向上させたという結果にある。皮膚科医の診断能力向上のみならず、一般市民が悪性腫瘍を放置することなく皮膚科受診のきっかけを生み出せるかもしれない。

ソウル大学を中心とした研究グループによると、彼らのアルゴリズムはAIが人間にとって代わるのではなく、人間をサポートする拡張知能として機能することを期待している。このアルゴリズムをスマートフォンで利用し、専門医受診へとつながるという流れを想定して、研究者たちは初期のデモ版をウェブサイトで公開している。一般市民の撮影では画像品質や構図の問題でアルゴリズムの結果に影響するなど研究の限界には注意が必要である。現在、新型コロナウイルス感染症 COVID-19感染拡大の中、遠隔診断のメリットはますます注目されている。実際に使用してみるとシステムの迅速なレスポンスなど大いに期待できるものであるため、まずは体感してみて欲しい。

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TOKYO analytica
TOKYO analyticaは、データサイエンスと臨床医学への深い造詣を武器とし、健康に関するあらゆるモノ・コトのエビデンス構築・普及をお手伝いするメディカルコンサルティングプロジェクトです。
The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcherを経て東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。