生徒達がさらされている校内暴力は、物理的や口頭のもの、メールやSNSによる電子的なものまで多岐にわたる。暴力的な学習環境では退学率が高く・出席率が低く・学業成績が低下することが知られており、その対策や救済のため医療費や生産性の損失で社会にかかるコストは少なくない。リスクが高い生徒を特定するための正確で自動化されたスクリーニング技術の必要性が高まっている。
学術誌 International Journal of Medical Informaticsに、米シンシナティ小児病院の研究グループで開発された「校内暴力のリスクを検出するAI」が発表されている。89校から暴力の懸念の有無にかかわらず募集した131名の生徒にリスク評価尺度と質問紙を用いた面接を行い、自然言語処理(NLP)で特徴を抽出した。そこから機械学習(ML)で開発されたアルゴリズムは、校内暴力にさらされた生徒をAUC 0.94の精度で小児精神科医の評価と一致して検出できた。インタビュー内容から個別介入が望ましい思考・視点・行動・人間関係の力学のような予測因子が発見されている。
研究チームは今後の計画として、多施設共同研究と実際の教育現場への導入を模索している。児童の暴力やいじめは、ますます潜在的で複雑な構造化をみせていると考えられ、手動によるリスクの抽出は次第に困難になってきた。患者のニーズ増に対して、児童精神保健の現場は労働集約的なタスクに応えられなくなりつつある。同研究のような効果的で自動化されたシステムが課題を克服する助けとなり、青少年の心の健康と豊かな教育を担保する時代の到来を大いに期待したい。